【NEW】西日本豪雨災害のダム放流

検証 西日本豪雨災害のダム緊急放流

2018年7月の記録的な豪雨により、西日本各地で大変な被害が発生しました。被害は、①土砂災害、②堤防の決壊、③ダムの緊急放流によるダム下流の急激な洪水水位の上昇、の3つに大別できます。ダム緊急放流について検証しました。

 

●京都・嵐山(桂川)上流の日吉ダムが緊急放流

京都新聞によると、京都・嵐山(桂川)上流の日吉ダムが貯水限界を超えて、7月6日午後2時から緊急放流を始めました。下流の嵐山は急激な増水に襲われました。
同日記者会見した近畿地方整備局の中込淳・河川部長は、「(放流で)ダム下流の水位が急激に上がっている。長時間の雨で堤防が弱くなっており、最悪の場合、堤防が決壊して氾濫する可能性もある」などと話し、周辺自治体に対して、川の近くに住む住民に避難を呼びかけるよう連絡していると明らかにしました。
日吉ダムは洪水調節と水道用水開発のために1998年から運用されている多目的ダムです。総貯水容量が6600万㎥、洪水調節容量が4200万㎥もある大規模ダムですが、今回の大雨では満水になって洪水調節機能が失われました。ダムは想定以上の洪水の場合は満水になり、ダムへの流入量をそのまま下流に放流するしかなくなり、洪水調節機能がなくなるばかりか、下流の水位は一気に上がり被害を拡大します。。

↑緊急放流する日吉ダム(画像出典:京都新聞)

↑増水する京都・嵐山(画像出典:朝日新聞デジタル)

 

●愛媛・肱川上流の野村ダム、鹿野川ダムが緊急放流

愛媛県の大洲市では、肱川があふれて甚大な被害が出ました。南海放送によると、肱川の増水は「一瞬に」「みるみると」「ダムの放水でこんなになった」「午前7時に、肱川上流の野村ダムからの放流量が4倍になった」等と報道されています。肱川上流には、野村ダムと鹿野川ダムという2つのダムがあります。
国土交通省四国地方整備局は7月11日に記者会見し、野村ダムと鹿野川ダムの放流操作について「適切だった」と説明。鹿野川ダムは、安全とされる基準の6倍に当たる最大毎秒約3700トンを放流したのに、「想定外の雨量だった」「操作規則に基づき対処したので適切だった」としています。つまり、ダムは想定以上の雨量では満水となり、ダムへの流入量をそのまま下流に流すしかなくなり、洪水調節できなくなることを国土交通省が認めたことになります。

↑証言する住民(画像出典:南海放送)

↑緊急放流する鹿野川ダム(画像出典:フェイスブック)

鹿野川ダムの流入量と放流量のグラフを見ると、ダムへの流入量は約6時間をかけで徐々に増えているのに、放流量は短時間に急激に上昇しています。ダムがなかった場合、「ダム流入量」がそのままダム下流の流量となります。つまり、ダムがなければ6時間のあいだに徐々に増水して避難ができたかもしれません。しかし、鹿野川ダムがあったために、ダムが満水となればダム放流で下流は短時間で急激に増水するため、避難が非常に困難な状況になったのです。

↑水源開発問題全国連絡会 嶋津 暉之氏作成のグラフに加筆

 

●昭和40年7・3水害は市房ダムの緊急放流が被害を拡大
昭和40年7月3日に人吉市を襲った大水害では、洪水ですでに増水しているときに、ダム放流を告げるサイレンの音や、「市房ダムが放流します」との広報車の声とともに、急激な増水に襲われました。「30分の間に水位が2mも上昇した」(堀尾芳人さん 上青井町で被災)、「洪水が津波のように押し寄せた」(重松隆敏さん 駒井田町で被災)など、多数の証言も残されています。人吉市の商店街では、市房ダムができる前の洪水では徐々に増水し、商品を2階などに上げることができていたのが、急激な増水で商品を上げることもできませんでした。今回の肱川での住民の証言と同じです。
これに対し当局は「市房ダムへの流入量より放流量は少なかったわけだから、もしダムがなければ被害はもっとひどかった」「満水になるまで市房ダムは頑張って洪水を防いだ」と繰り返すばかりでした。しかし、ダムの下流で生活する住民にとって一番怖いのは、増水するスピードです。そのことは、上のグラフを見れば明らかです。
昭和46年8月水害では、人吉新聞は「ダムが犯人だ」との見出しを掲げ、市房ダムが洪水調節不能に陥ったことを示唆。市房ダムからの放水警報は人吉市民を怯えさせ、高台にある人吉西小学校には2000人以上の市民が避難しました。

 

●立野ダムは洪水時に「穴」が流木等でふさがり、災害源となる!
「想定外の災害に備えて立野ダムは必要」、と考えている人もいるかもしれませんが、想定以上の洪水のときは立野ダムは満水となり、ダムの上部に設けられた8つの穴からダムへの流入量をそのまま放流します。ダム下流の白川は一気に増水します。
ゲートのない「穴あきダム」である立野ダムの場合は、洪水時にダム下部の穴(幅5m×高さ5m)が流木等でふさがった時点で洪水調節できなくなります。
今回の豪雨災害でも、各地で土砂災害による大量の流木が発生し、橋脚をふさぐなどして被害を拡大しています。幅5mしかない立野ダムの穴が流木や土砂でふさがるのは明らかです。短時間で満水となったダムの周辺で斜面崩壊が起これば、ダム津波が下流を襲います。立野ダムは災害をひき起します。

●まとめ

①ダムは、想定以上の降雨ではダムは満水になり、ダムへの流入量をそのまま下流に流すしかなくなり、洪水調節できなくなる。ダムがない場合に比べ、洪水の水位も急激に上昇する。ところがその点を、ダムを建設する前にも建設されてからも、国土交通省は住民にきちんと知らせようとしない。だから、今回のような悲劇が生じるわけである。
②これまで行政は、計画規模以上の降雨で被害が発生した場合、「想定外」ということで責任を逃れてきた。ところが近年、異常気象で「想定外」の災害が頻繁に起こるようになり、「想定外」が想定外ではなくなった。計画規模があてにならなくなった近年の豪雨を考えると、ダムは洪水調節で有効な選択肢どころか危険である。計画規模で被害を想定する現在の治水計画は、根本から見直すべきである。 以上

検証 西日本豪雨災害のダム緊急放流

↑短縮版PDFファイル(A4で2枚)です。ご活用ください!