立野ダムを造ってはならない理由

(1)立野ダム計画とは?

立野ダムは、熊本市を流れる白川の上流の立野峡谷(阿蘇外輪山の唯一の切れ目)に国土交通省が計画した、高さ90mの洪水調節専用の「穴あきダム」です。普段はダム下部の穴(幅5m×高さ5m)から水を流して水をためず、洪水時のみ水をためるダム計画です。発電や農業利水には利用できないダムです。

1969年に予備調査が始まり、半世紀余りが経過した2018年、国土交通省はダム本体工事に着手しようとしています。総事業費は917億円(平成24年現在)で、熊本県の負担は275億円(県民一人あたり1万5000円)にもなることはほとんど知られていません。

↑立野ダム完成予想図(国土交通省作成)

↑立野ダムの機能(国土交通省資料)

 

(2)崩れて当然の脆弱な地盤

熊本地震により、立野ダム水没予定地の大半が崩れました。阿蘇や立野峡谷がどのようにして形成されたかを考えたら、壊れて当然の脆弱な地盤だからです。

立野溶岩の上に堆積した火山性堆積物が軒並み崩壊しています。ダム水没予定地の大半でトラックや重機が下りていく道路がつくれないので、崩壊斜面をコンクリートで固める等の土砂崩壊対策工事もできません。計画通りダムが機能するには今後、崩壊した土砂のうち30万㎥を掘削する必要があるそうですが、10トンダンプで5万台分もの土砂を運び出すこともできません。

立野ダム完成後、洪水時にダムの水位が上がれば、周辺の火山性堆積物がさらに崩れ、湛水(たんすい)地すべりが発生するのは明らかです。熊本地震後、付近では横ずれ断層も確認されたのですが、国交省は「ダム本体予定地から500m離れているから大丈夫」との見解です。このような場所に、高さ90mもの巨大なダムをつくれば、次の世代に大きな災害源を残すことになります。

 

(3)洪水時、幅5mの立野ダムの穴が流木や土砂等でふさがり、洪水調節できなくなります!

2012年の九州北部豪雨で、阿蘇カルデラ内では400か所以上の土砂災害が発生し、大量の流木等が白川を流れ下り、堰や橋脚などに引っかかり、護岸や有明海の海岸にも打ち上げられました。

立野ダムには、ゲートのない3つの穴がダムの下のほうに開いていますが、その幅は5mしかありません。しかも、穴の内部に流木や岩石などが入らないように、ダムの穴の上流側は、すき間わずか20cmのスクリーン(柵)で覆われます。これでは洪水時にダムの穴は、流木などでふさがるのは明らかです。ところが国交省は、「ダムの穴をふさぐ流木は、ダムの水位が上がれば浮いてくるので大丈夫」との見解です。

洪水のときにダムの穴がふさがったら、洪水を下流に流すことができず、ダムは短時間で満水になります。満水となった時点で、ダム下流の洪水流量は、0から一気に最大に上昇します。ダムが水位を上げているときにダム湖のまわりで地滑りが起きたら、ダム津波がダム本体を乗り越え、下流を襲います。立野ダムは災害をひきおこします。

(4)極めて不十分な技術委員会の検証

熊本地震直後の2016年7月に国土交通省が設置した「立野ダム建設に係る技術委員会」は、わずか3回の会合で、同省の「立野ダム建設は技術的に可能」との見解をそのまま認めてしまいました。委員には国交省から天下った人もいます。国交省が選んだ委員が、国交省の見解に異議を唱えるわけがありません。国交省は、そのような技術委員会の見解を「錦の御旗」に立野ダム建設を推し進めています。仮にダム本体建設が「技術的に可能」でも、まわりの地盤が壊れたらダムは機能しなくなるし、非常に危険であることは明らかです。

 

(5)河川改修で白川の流下能力は大幅に向上

国土交通省が情報開示した資料によると、2012年の九州北部豪雨の後、河川改修で熊本市内の白川は川幅が広がり、高さ2mの堤防も完成したことで、改修前と比べ各地点で毎秒1000~2000トン程度余計に洪水を流すことができるようになりました。これまで水害被害を受けていたのは、河川改修が完成していなかった地区だけです。

一方で、立野ダムの洪水調節能力は、ダムが計画通りに機能しても、わずか毎秒200トンです。熊本地震後の立野ダム水没予定地を見ると、ダム本体を造れたとしても機能しないことは明らかです。立野ダム建設よりも河川改修を進めるべきです。

 

(6)国立公園の特別保護地区を破壊

立野ダムは、阿蘇くじゅう国立公園の36ヘクタールもの広大な自然や、世界ジオパークに認定された阿蘇・立野峡谷の地質遺産を破壊し、水没させます。立野ダム建設予定地は、現状変更行為が許されない阿蘇くじゅう国立公園の特別保護地区にあり、国の天然記念物である北向谷原始林の一部も水没します。立野ダムにより下流への砂礫の供給が止まることや濁水の長期化により、下流の白川や有明海までの自然環境は大きなダメージを受けます。世界文化遺産登録を目指す阿蘇にとって、立野ダムはあってはならないものです。

↑立野ダム本体予定地右岸の立野溶岩の柱状節理

 

(7)膨れ上がる事業費

熊本地震により、立野ダム建設現場の復旧や土砂崩壊対策工事等に膨大な国費が投入されたにもかかわらず、国交省は立野ダムの総事業費917億円(平成24年現在)を見直そうとはしません。他にも資材費の高騰などで、さらに事業費が大幅に増えるのは明らかです。立野ダム事業費は、震災復興に投入すべきです。

 

(8)説明責任を果たさぬ国土交通省

国土交通省は、これまで住民が提出した8通の公開質問状に全く回答せず、「ホームページで丁寧に説明している」との姿勢です。しかし、ホームページ上の国交省の見解は、住民が出した質問に対して肝心な点には答えておらず、質問と国交省の見解が全くかみ合っていません。また、国交省はこれまで住民が何度も要請した立野ダム説明会さえ一度も開催しません。

国土交通省は2017年7月より、立野ダム予定地を含む「白川復旧・復興対策現地見学会」を4回開きましたが、その開催は住民に周知されず、インターネット等で予約したごく少数の住民しか参加できませんでした。事前に提出していた公開質問状への回答は一切なく、その場での質問に対しても「ホームページを見るように」と繰り返すばかりでした。これで「説明責任を果たした」と言えるのでしょうか。

(2018年1月23日更新)

 

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立野ダムをつくってはならない理由2018.1

 

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