6/9up: 記事・考・白川 第2部 流域は今 7 評価分かれる立野ダム “想定外”へ幅広い策を

 「立野ダムの予算は付いたが(工程は)まだ始まったばかり。スピード
感を持って総合的な治水対策を進めてほしい」
 5月20日、熊本市内のホテルであった白川改修・立野ダム建設促進期成
会の総会。流域首長や国交省関係者が顔をそろえる中、会長あいさつに立
った幸山政史熊本市長は、国に同ダムを求めた白川の整備加速を求めた。
 政府は本年度、立野ダム事業に28億3200万円を予算化した。200
9年12月に検証の対象になり、「新たな段階に入らない」とされ、以後は
工事用道路の補修などにとどめていたため、前年度より約6倍増となっ
た。
 ダム本体を造るには川の流れをいったんせき止め、別ルートに迂回させ
なければならない。そのため本年度は、左岸側にある北向山に約480
メートルの仮排水路トンネルを掘る工事に入る。工事は約3年かかる見通し
だ。
 続いて、予定地の表土を削り、岩盤を露出させる基礎掘削に約3年。並
行して岩盤の割れ目にセメントミルクを流し込んで補強し、水が漏れない
ようにする基礎処理(グラウチング)も行う。
 順調に進めば19年度にダム本体のコンクリート打設工事(約3年)に入
り、22年度までに本体を完成。供用開始前には最長6カ月の試験湛水をし
て性能を確かめる。
 熊本大工学部の大本照憲教授(河川環境工学)は「立野ダムにピーク流
量カットと洪水到達時間を遅らせる効果があるのは確か。ただ、土砂の堆
積や流木対策はさらに検討が必要だ」と言う。
 一方、村田重之・崇城大名誉教授(災害工学)は「阿蘇の森林の保水力
を高めることが白川流域の被害低減につながる」と主張。「森を健全な状
態に戻し、併せて黒川地区の遊水地整備と下流の河川改修を進めればダム
は造らずに済むはずだ」と訴える。
 贅否や評価が分かれる中で、再び動き始めた立野ダム事業。国交省治水
課は「いろいろ意見があることは承知している。しかし、定められた検証
プロセスを踏んで大臣が事業継続を判断した。決まった以上は適切にしっ
かり進める」と語る。
 幸山市長も「河川改修に加えて、ダムで流量調節ができるようになれば
効果は大きい。市民の生命財産を守る立場の市長として、速やかな事業の
進捗を求めたい」と強調。ダムに疑問の声があることについては「周辺
の自然環境は極力守りながら進めてほしいと思っている。国は、環境や機能
への懸念に対して具体的、丁寧に説明してほしい」。
 昨年の豪雨時、阿蘇では黒川が広範囲に氾濫した。大本教授は「阿蘇地
域は、立野ダムに期待されるピーク流量カットの約4倍の水を受け止め
た」とその甚大さを分析。想定外の大雨について「ダムなどの工作物だけ
で対応することは難しい」とも指摘する。
 「白川の特性を踏まえた上で、流域全体で被害をどう最小限に抑える
か。土地利用の在り方まで含めて幅広く考えなければならない」
  (森紀子、渡辺哲也)=おわり

【図】立野ダム仮排水路工事の予定地

立野ダム建設事業の経緯
1969年4月 予備調査着手
 79年4月 実施計画調査着手
 83年4月 建設事業着手
 84年、89年 損失補償基準妥結(宅地、山林など)
 93年1月「立野ダム建設と長陽村(現南阿蘇村)
     地域整備事業促進のための協定書・
     確認書」調印
 3月 白川水源地域対策基金の設立
2000年12月 白川水系河川整備基本方針策定
 02年7月 白川水系河川整備計画策定
 09年12月 国のダム事業検証対象に(事業凍結)
 11年1月 ダム事業検証で第1回「検討の場」
   10月 第2回「検討の場」(治水対策6案を抽出)
      パブリックコメント
 12年9月 第3回「検討の場」
      (最も有利な案は「ダム案」)
    公聴会、意見募集
   10月 九地整の事業評価監視委員会が事業継続
      を妥当と判断
   11月 国交省有識者会議「検証は適切」と確認
   12月 羽田雄一郎国交相(当時)が「ダム継続」方針決定
 13年5月 13年度政府予算決定
      仮排水路トンネル工事費など28億円

熊本日日新聞 2013年06月4日

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