2/9up: 記事・考・白川 第1部 検証 立野ダム⑦ 複雑な地質構造 近くに断層、影響懸念も

考・白川 第1部 検証 立野ダム⑦
複雑な地質構造 近くに断層、影響懸念も

 深くV字型に切れ込んだ谷の底、立野ダム建設予定
地(南阿蘇村、大津町)の白川右岸に結晶を思わせる
断崖が続く。六角形の鉛筆を束ねたような構造の「柱
状節理」で、5万年ほど前に流れた立野溶岩が冷えて固
まったものだ。巨大な岩のカーテンのようでもあり、
火山のダイナミックな営みを垣間見ることができる。
 この場所にどうダムを建設するのか。国土交通省立
野ダムエ事事務所によると、表面の風化部分を削り、
強度の高い岩盤を露出させるという。内部の亀裂には、
セメントミルクを流し込んで補強する計画だ。
 熊本学園大の新村太郎准教授(火山岩岩石学)は「立
野は何度も溶岩が流れては谷を埋め、削られて、また
溶岩が流れて…を繰り返した複雑な地質構造を持つ。
掘削後にもろい地質が現れたとき、計画変更の事態も
あリ得るのではないか」と指摘する。
 立野ダムは完成まで、今後10年ほどかかる予定。工
期の長さから難工事を懸念する声もある。これに対し、
同事務所は「建設予定地の地質や強度に問題はない。
現場地形が狭く、工事用道路が1本しか確保できない
上、作業スペースも限られるため」と説明する。
 立野ダムが計画されている立野峡谷は、標高700
~1200メートル級の阿蘇外輪山が切れた唯一の場所だ。
はるか太古、カルデラ内部には湖があり、神話では阿
蘇の神、健磐龍命(たけいわたつのみこと)が蹴破
って白川が流れ出したとされる。
 実際のところ、立野が最初どのように″切れた″の
か、完全には解明されていない。ただ、間近に布田川
断層帯の北東端の北向山断層が走っており、断層の存
在が影響しているとの見方は強い。熊本大の宮縁育夫
准教授(火山学)も「断層が動いてできたかどうかは
分からないが、断層の近くでは割れ目ができやすい。
その弱い部分は崩れやすく、水による浸食もしやす
い」と話す。
 国の地震調査研究推進本部は、布田川断層帯うち
北向山断層を合む区聞か活動した場合、マグニチュー
7・0程度の地震を推定。30年以内の地震発生確
率は最大0・9%で、「日本の主な活断層の中では
やや高いグループに属するとしている。
 同事務所は調査の結果、ダム直下やダムの方向に直
接向かう断層は確認されておらず、問題はない。耐震
についても、最新の基準に基づき設計を行っている」
とする。
 ダム建設予定地の上流約1キロにある白川と黒川の合
流地点。ここにも九州有数の規模を誇る柱状節理の岸
壁がそびえる。
 一帯は阿蘇の成り立ちを知る上でも重要な場所だ。
カルデラ湖の消滅時期の違いなどで、北側の阿蘇谷と
南側の南郷谷には高低差がある。阿蘇長陽大橋からは
阿蘇谷を流れる黒川と南郷谷の白川の高さの差を実感
できる。
 新村さんは言う。「立野峡谷は学術上も貴重なもの
が多い。まさに地学の教科書のような場所なんです」
                  (平井智子)

【写真】立野ダム建設予定地の上流右岸側にそびえる「柱状節理」。
左奥が建設予定地=南阿蘇村

熊本日日新聞 2013年2月8日

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