2/11up: 記事・考・白川 第1部 検証 立野ダム⑧ 観光への影響 「阿蘇の魅力損なわれる…」

考・白川 第1部 検証 立野ダム⑧
観光への影響 「阿蘇の魅力損なわれる…」
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 南阿蘇鉄道の立野駅から約400メートル。水力発電所の
水圧鉄管が走る急斜面に赤茶色の立野橋梁がかかる。
車窓から望む緑のV字谷は絶景。人気の観光列車「ト
ロッコ列車」の名所の一つだ。
 「壮大な自然景観が売り。車両もスピードを落として
観光客にアナウンスする」と胸を張るのは同鉄道の津
留恒誉専務(46)。しかし、立野橋梁のすぐ上流には立
野ダムが計画されている。熊本市役所の本庁舎より約
30メートル高い約90メートルのダムサイトが谷をふさぐ。
「観光客が激減するのではないか心配。コンクリート壁の
説明をしても…」と苦笑する。
 立野橋梁とともに、同鉄道の利用者に人気なのが、
北向山原生林が楽しめる第一白川橋梁。立野ダムが完
成すると、高さ約60メートルの鉄橋は満水時に基礎部分とア
ーチの一部が浸水する。このため、架け替え工事が検
討されてきたが、費用の問題もあり、「架け替えか補
強かは、今後の協議次第」と国交省立野ダム工事事務
所。
 これに対し、南阿蘇鉄道は「架け替えの場合は休業
もあり得る。鉄骨が一本でも水に漬かれば橋の痛みは
大きく、補強したとしても維持費がかさむ」と協議の
行方を案じる。
 両橋梁とも1928年に完成。厳しい地理的条件の
中、当時の最先端技術を駆使して造り上げた貴重な土
木遺産だ。元鉄道具で、旧一の宮町文化財保護委員長
の喜悦渉さん(91)は「鉄道遺産と呼ぶにふさわしく、
後世に残すべきもの。ダムのために、架け替えをしな
いでほしい」と訴える。
 一方、阿蘇の地質や景観を生かした世界ジオパーク
認定や、世界文化遺産登録へのダムの影響を懸念する
声もある。
 立野ダム建設予定地一帯の立野峡谷は、「阿蘇ジオ
パーク」が見どころのジオサイトとして紹介する33ヵ
所のうちの一つ。観光や行政機関などでつくる阿蘇ジ
オパーク推進協議会は「ジオパークは自然だけでな
く、人々の生活における活用も重視している。ダムは
趣旨から外れない」との立場だ。
 ただ、貴重な地質が水没し、景観が損なわれるので
はないかとの懸念は消えない。会長の佐藤義興阿蘇市
長は「今後、議論すべき課題」と話す。
 県と阿蘇7市町村でつくる阿蘇世界文化遺産推進室
の日田勝也推進室長は「申請区域は各市町村と話し合
って決めるが、ダムの区域を申請しない選択股もあ
る」と指摘。ダムの区域を含める際は、景観に配慮し
た工法や、防災面からの価値付けなどを検討する必要
があるという。
 高森町で飲食店を経営する早野慎哉さん(31)は言
う。「阿蘇は人間と自然の共生が売り。ダムによって、
魅力が損なわれてしまうのではないか。とにかくもっ
と情報がほしい」(藤山裕作、佐藤大樹)
                  =第1部終わり

【南阿蘇鉄道を入れた立野ダム完成予定イメージ(国土交通省資料)】

熊本日日新聞 2013年2月9日

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